|
◆ AE試験結果評価:
検出されたAEデータは、欧州で実施された3000 件以上のAE試験例で構築されたデータベースに基づいたデータの評価・判定手順に従い解析します。この評価・判定手順では、以下に示される5段階のグレード分けが行われ、それぞれの損傷度を有していると判定されます。
|
|
|
A グレード:
B グレード:
C グレード:
D グレード:
E グレード:
|
腐食損傷は存在しないと考えられます。
80%程度の確率で腐食損傷は存在しません。
60%以上の確率で腐食損傷が存在します。
85%程度の確率で軽微なものを含め腐食損傷が存在します。
90%程度の確率で腐食損傷が存在しす。またこの時、60%以上の確率で大規模な補修あるいは底板の一部交換などを必要とする重大な損傷が存在します。 |
|
大型タンクのAE試験 |
|
実際の判定には、上記に示した通常のAE 解析データ(Overall) によるグレードと、信号継続時間が長く大きなエネルギーを持つAE 信号(Potential Leak Data (PLD) と定義)の評価で得たグレードが、組み合わせて用いられます。下表に、その判定基準を示します。ここでⅠと判定された場合、タンクは開放することなくそのまま操業を継続し、4 年後に再度AE 試験の実施を推奨しています。またⅡと判定された場合、操業を継続し、2 年後に再度AE 試験の実施を推奨しています。一方、ⅢあるいはⅣと判定された場合、開放検査を遅くとも半年あるいは1 年以内に行うべき事を推奨しています。 |
|
|
|
この判定基準に従ってメンテナンスを実施することが一般化され、開放検査期間を大幅に延長することが可能となりました。これにより、維持・管理費を従来に比べ90%程度節約できるようになったと言われています。 |
|
◆ AE試験結果のグレード分けとタンク開放後に検証された損傷度との対応: |
|
|
|
左図にヨーロッパで実施された157 基のタンクAE 試験で得たグレード分けの結果と、タンク開放後に検証された損傷度との対応を示します。図中、灰色で示される棒グラフ(FU1/2)は、開放時に全く補修を必要としなかった事例を、黒塗りのグラフ(FU3)は軽微な補修を必要とした事例を、また白抜きのグラフ(FU4)は、大規模な補修、あるいは底板の一部交換など重大な損傷の存在した事例を示します。ここで、グレードA
と判定された場合には補修の必要な事例は全く認められず、またグレードB においても、その80%程度は補修を必要としませんでした。一方、グレードがC,
D, E と変化するにつれ、補修の必要比率は高まり、グレードE においては、90%程度が補修を必要としていました。したがって、AE 試験によるグレード分けは、底板の損傷状態とよく相関し、実用的評価を実施する際に有効な情報を与えることが理解されます。 |
AE 試験結果のグレード分けとタンク開放後に検証された損傷度との対応 |
|
|
|
|
◆ TANKPACTM試験の適用事例: |
|
|
|
|
|
|
ナフサ タンクへの適用例(以前は “E” グレード、
そして補修後は “A” グレード) |
|
“E” グレードと判断された原油タンクのAE活動度の3次元表示
と発見された損傷部 |
|
|
|
|
|
|
110m 径の GRP ライニング原油タンクにおける
TANKPACTM と MFL の比較 |
|
67m 径 GRP ライニング原油タンクの裏面腐食における
TANKPACTMと MFL の比較 |
|
|
|
|
|
|
|
ガソリン タンクのリーク |
|
50m 径の高温オイル タンク |
|
ナフサ タンクのリーク |
|
|
|
|
|
- 極めて集中度の高いAE発生源(通常の50倍程度)。
- 製品タンクにおいては、その集中度が大きくない限り小さなリークを発見することは困難。
- 開放検査で1mm 径程度の孔を発見。
|
- 全体判定で“E” に分類。
- アニュラー部に大きなAE活動。(15mmのアニュラー板に8mmに至る腐食減肉。)
- 漏洩(リーク)を防ぐため、タンクは直ちに操業停止。
|
|
- 一日当たり100 立方メートルの損失。
- リークの存在は視認出来ず。
- ナフサの臭気のみを確認。
- AE信号のレベルが高かったため、2%の感度で2分間計測。
- 図中ピークの位置に1cm径のリーク孔を発見。
|
|
|
◆ TANKPACTM試験の限界 |
|
|
- 計測条件をリセットしてしまうため、機械的あるいは科学的に清掃された底板の状況を評価することは不可能です。
|
- 小規模なリークは、活性な底板の腐食により、確認できない可能性があります。
- 大規模なリークは、底板の全体的評価を不可能にします。
- 保温材下の活性な腐食は、底板の評価を不可能にする可能性があります。
- AE源が同時多発的に生ずるため、非常に活性の高いタンクの位置標定は、不正確になる可能性があります。
- 環境雑音、その他の要因で全てのタンクが検査可能とは限りません。
- 試験手順が複雑なため、常に検査員の訓練・管理が必要です。
|
|
◆ TANKPACTM試験の品質管理と訓練
|
|
- ISO 9002 に基づく文書管理システム:
- 十分な訓練と技量認定を受けた技術者。
- TANKPACTM 試験手順の管理。
- TANKPACTM 試験ワーク シートの管理。
- 各試験の品質管理計画。
- ディジタル化したデータの保存と完全なトレーサビりティ。
- 技術者の訓練と技量認定:
- ASNT II AE 一般。
- TANKPACTM 試験手順の講義とフィールド訓練。
- TANKPACTM 筆記及び実技試験。
- TANKPACTM 試験技術者となるためには、最低50基程度の試験経験をもつことが必要。
- 最終報告書にはPAC level III 技術者の検査と承認が必要。
|